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2012年1月21日 (土)

原発労働者の現状と、原発労組の結成に向けた課題

1217日に野田首相は「収束宣言」をおこなった。(それをターニングポイントに、政府・東電の「反転攻勢」が始まったかに見えるが、それは最後にふれることにする。)野田の言う「冷温停止状態」「第2ステップの終了」なるものは言葉のあそびであり、また全くの欺瞞である。事故は収束していない。住民の安全な帰還は保障されていない。3年程度の「中期的課題」として①本格的な水処理施設の設置、②放射性地下水の遮水壁の設置、③3および4号炉を覆うコンテナの設置を行うと言うが、それでようやく放射能の流出を抑えられるかどうかだ。燃料の取り出し開始は、まだ視野の外というべきだろう。

被害にみまわれた福島の人々とともに、原発で働く労働者たちの苦難は続く。また、福島第一原発の廃炉には30年がかかると言われており、事故終息作業を上回る危険が労働者を襲うことになろう。仮に原発1基の定期点検時と同じ2,500人が従事するとしても、のべ90万人がそこで就労することになる。私たちは54基すべての原発を直ちに停止し、廃炉にすることを求めているが、それをやりきるためには1桁ちがう数字になるだろう。私は8月に「原発労働者組合の戦略課題」をBlog に掲載したが(注1)、改めて原発労働者、特に福島で働く労働者の状態をデータに基づいて検討し、原発労組結成の課題を考えてみたい。

●原発労働者の大半は、「低線量」で働きつづける地元の労働者

 まず原発労働者のプロフィールつかまないことには、働きかけも組織化もおぼつかない。放影協の「被ばく線量登録管理制度における統計資料」(09年度、注2)のデータから見えてくるのは、次のような点だ。

①労働者の年齢は18歳から70歳以上にわたる。20代から50代までが各20%程度を占め、平均年齢は41.4歳である。

Yearrate_2

②被曝は平均1.1mSv20代が1.4mSvと比較的高い線量になっている。男性の最大値は23.0mSv40代前半)、女性の最大値は3.6mSvである。

③年間の就労者数は計75,988人だが、男性が75,006人(98.8%)、女性が922人(1.2%)である。

④就労者は05年度以降、30代前半を除き全年齢で増加、特に20代前半で1.5倍増、60代前半で倍増している。被ばく線量別の労働者数もそれに準じて増加している。原発の新設なら線量が低く、同一労働量に対する人員増なら被曝量は下がるはずだ。したがって原発の定期点検や事故の増加に伴う人員増と思われ、20代前半と60代後半の顕著な人員増は、非正規労働者の雇用を想像させる。

Yearmen_2

←年齢別労働者数の推移

Msvmen

←線量別労働者数の推移

⑤興味深いのは、1年間に労働者が就労した事業所の数と、被曝線量との相関だ。就労した事業所数は、平均1.35カ所である。1つの事業所のみで働いた労働者が74.6%を占めるが、それはおおむね、原発労働者の大半が原発の地元住民であることを示しているように思える。そして被曝線量は就労事業所数が増えるに応じて増加し、6ヵ所以上になると減少に転じる。大胆に想像するに、下表のように就労事業所数によって労働者の層が相違するのではないか。

事業所数

   1

    2

    3

    4

    5

 6以上

労働者層

地元住民

ジプシー下請け労働者

ジプシー専門技能者

技術者

労働者数

56,677

  12,836

   4,346

  1,456

   508

   175

平均mSv

    1.3

    2.3

    3.0

    3.8

    5.5

    3.8

Mensite

⑥先に④項で労働者が増加していると述べたが、それは2または3事業所で働く層のみであり、すなわち各地を渡り歩く非正規・下請けの若年または老年労働者であると推定される。

⑦なお0609年に従事した労働者はのべ108,028人とされており、09年度が10,680人なので、各年に1万人強が離職(離職率=14%強)し、それ以上の労働者が新たに参入したことになる。

●福島の事故現場の労働者は、どのような状態におかれているのか

福島原発事故の現場で働く労働者の状態はどうか? このかん人数やその被曝量に関する公式の情報は、東電から政府あて報告される「福島第一原子力発電所緊急作業者の被ばく線量等について」(注3)のみだった。だがその報告は、①月ごとに当月の被曝線量が下がり続けていることを見せようと腐心し、②就業者数の増減を隠そうとするものだった。また、③いまだに行方不明者が存在し、④下請け労働者の内部被曝の計測が遅れ、⑤計測した人数や線量の差し替えが常態化していた。私は厚労省などとの交渉の場で、就労したすべての労働者の被曝線量とその分布、月ごとの入所・退職者数と在籍者を明確にさせるよう要求してきたが、ようやく1227日の報告でだいぶ改善されている。

このかんの報告と12月の報告を総合すると、11月までに事故現場で働いた下請け労働者は15,530人、最大被曝量は238.43mSv、平均累積被曝量は9.25mSvである。また、下請労働者の就労の推移と毎月の平均被曝線量は以下のようだ。

Menfukushima

Highlevel

上側のグラフで第1の特徴は、4月段階で1.833人というこのかんで最大の退所者を出していることだ。3月の全下請け労働者2,088人の88%にあたる。過酷な事故への対処と、地元の労働者の避難がその背景にある。それを挽回するため3,868人という、これまでで最大の新規入域者があるが、やくざなどを使ってやみくもに不法な労働者狩りが行われたのであろう。それから新規入域者は減り続け、8月には退所者が逆転し、ピークの7月の6,152人に対し11月には5,069人と全入域者が18%も減少した(注4)。危険で苦しい労働に対し、第一原発で働く3次下請けの労働者の給与は、昼夜変則勤務を含む週4日の勤務で20万円強だという。それは東電が、下請業者に対する支払いを滞らせていることも理由の1つだ。また東電は、警察の指導により昨年7月に暴力団排除宣言を行ったが、あいかわらずやくざの強収奪が続いている可能性が高い。福井・大飯原発でも先日、暴力団が絡んだ偽装請負が発覚している。そのような状況下、福島第一の現場から逃げ出す労働者が多いのは当然である。

その結果、下側のグラフにあるように被曝線量が高止まりしている。「低減*0.81」のラインは、東大・児玉教授の「事故現場の環境放射線量は1年間で1/10になる」という説を参考に、7月起点で引いたものだ。8月の線量データはそのラインにほぼ合致しているが、9月以降それを上回り、平均して「低減*0.81」の値に対し120%のレベルだ。これはちょうど7月以降の入域者の18%減少の逆数になっている。要は同一の仕事量に対し労働者が減った分、一人ひとりの労働者の被曝量が同じ割合で増えるという、しごく当然の結果なのである。

これはまさに悪循環である。解決策は、被曝量の基準を下げ、労働者の安全と権利と生活の保証を高め、より多くの労働者が分担してより短時間の労働を行うということ以外にはない。それはそのまま、原発労働組合の必要性――原発労働者を守るとともに、福島や全国の人々にも安全を確保する二重の必要性――を示している。そうでなければ、廃炉や「中期的課題」どころか、まやかしの「冷温停止状態」の維持もおぼつかないだろう。

●「収束宣言」を契機にした、政府・東電の反転攻勢をはねのけよう

政府は「収束宣言」に続き、1219日、春から20mSv未満の地域への住民の帰還を始めるとの方針をだした。これは住民の健康を全く無視し、補償を切り縮めるためのものだ。また東電は22日、企業向けの電気料金を春から20%値上げする申請をおこなう。家庭向けも10%だ。昨春の「計画停電」による脅しの再現である。そして27日、政府・事故調査委員会は当初の「地震原因説」との予測をくつがえし、政府や東電の責任に関しても個人的な失敗や組織運営のまずさの指摘でお茶をにごした(注5)。11日の「除染電離則」(注6)の施行は、除染作業を行う労働者の健康を守ることを目的と言いつつ、政治的には「除染」による住民帰還の路線を整備する役割をもつ。そのなかで福島第二原発の再稼働の動きさえ出てきている。「反転攻勢」の始まりだ。

しかし118日、傍聴者を別室に締め出して行われようとしたストレステストの意見聴取会には多くの仲間が介入し、開催を阻止した。3時間半後にようやく再開され、反対派の委員を排除し11人中4名の「買収」された委員だけでテスト結果を「妥当」と判断したが、それはまったく正当性を欠くものだ。23日からIAEAが来日して判断のハク付けを試みるようだが、同じ「原子力ムラ」の仲間内の茶番劇にすぎない。私たちは117日、「3/11再稼働反対全国アクション」を新たに結成し、311日には都内でデモや行動を展開する仲間たちと合流して国会包囲の行動を起こすことに決めた。4月末の全原発の定期検査入りの時期をターゲットに、再稼働阻止の闘いを強める。このカウントダウン的な闘いのプロセスのなかで、各地で改めて拡がりつつある地域デモ、様々な課題への取り組み、そして特に原発現地の闘いとのネットワークの強化を図っていきたい。

そのような事故一周年を前後する時期、原発労働者の健康と権利を守り、その団結を作りだしていくことは決定的に重要だ。私たちはこの間、事故現場に近い地域の反原発団体や労働団体との交流を行い、また首都圏でがれき焼却や輸送など被曝労働に従事する労働者との連携を求めてきた。この活動を目に見える形にし、組織として確立していくことが、この時期の課題となる。1/18の意見聴取会がそうだったように、事故現場や被曝労働の現場に「介入」し、全原発の廃炉へとおおきく舵を切っていきたい。

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(注1http://yo3only.cocolog-nifty.com/blog/2011/08/post-1867.html のパワーポイントのデータ

(注2)放影協は(財)放射線影響協会の略で、放射線管理手帳をもつ労働者の線量の把握・管理を目的に「中央登録センター」を設けている。本資料は09年度の「公表」で、それが最新だと思われる

 http://www.rea.or.jp/chutou/koukai/H21nendo/houbunn-h21.htm 参照

(注3)東電のHPの「プレスリリース」を検索すると、最近はほぼ月末に先月分までのデータの集計報告を見ることができる

(注4)これらの下請け労働者の数字は、このかん発表された各月の新規入域者数と、12月の報告における各月の従事者数を用い、退所者数を計算したもの。(注1)に紹介した文章における数字は、4月の従事者数と、朝日新聞が発表した6月の下請け労働者数(5,178人。12月の東電の報告では5,911人)を用い、その間の退所者数を比例計算で算出したもので、精度は高くなかったが傾向はおおむね合致していた

(注5http://yo3only.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/post-2a8e.html 参照

(注6)正式名は「東日本大震災により生じた放射性物質により汚染された土壌等を除染するための業務等に係る電離放射線障害防止規則」。1222日のプレスリリースが厚労省のHPに公表されている

 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001yy2z.huml

そのうち規則の概要は「除染業務をおこなう事業主の皆さまへ」が判りやすい。規則本文も付いている

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